2.




偶然外せない質問があってたまたま職員室を訪れて。
たまたま話題に花が咲いて戻る頃には廊下に薄闇が満ちていた。

偶然に偶然が折り重なって必然へ。


(じゃあ私がここでこいつと会ったのは運命とでも?)



腕の時計に目をやれば針が示すのはすでに人が出歩くことない時間。
で、黙々と寮を目指し歩いていくはずだったけれど。
…忘れていたがこんな時間ほど生き生きと暗躍するロクデナシがこの学校には少なくとも、存在してる。

影は、急にさし込みまるで行く手を阻もうとするかのようで。
必要以上にドキリとしたのは、そのシルエットがわかりすぎるほどわかる、ものだったからで。
思わず走った動揺を、気取られたくなくて必死で押し込めた。

「やあ」


ナンデドウシテイマニナッテ


刹那的に踵を返そうかと思ったがそうしなかったのは、ひとえにある種のプライドが勝ったせいだ。
久しぶりとも思えない変わらない笑顔を認めてそう思った自分にも腹立たしくってただ、睨む。

「こんな星がきれいな夜には出歩きたくなるよね」

わざとらしい文句も発する姿も見たくもなくて、
嫌でも身に纏わる声は、だから慎重に意識外に蓋ぎ出そうと葛藤して。
あからさまに壁脇ぎりぎりまで避けて、いかにも颯爽と横を通り過ぎる、過ぎようと思った。
──思った瞬間に。
道が阻まれたんだと気付く。


「待って、エバンズ」


やや乱暴ともいえる動作で片手を壁に付かれて動けない。
動けないのは、眼前にこの男が居るせいだけじゃない。
濃く深くさす影、くらりとする。
状況はわかるのに追いつかない理解。
正面には息遣い。
そして近い声。
それ以上に、強い視線。
どうしてだか唇が震えて、
ああ泣きたいと思った。
泣きたい
泣きたい


「君に─」
「どういうつもりか知らないけれど、」

続きを聞いてはいけない気がし、無理やり言葉で遮った。
声が震えなかったことに安堵をして、その勢いでやっとのこと睨み上げる。

「ジェームズ・ポッター。
 私は夜馬鹿みたいにふらふら徘徊するあんたとは違う。わかったなら、そこをどいて」

動こうとして、でも動けずに決然とした声が耳に降る。
エバンズ、と呼ばわる譲らないポッターに思わず息が詰まった。


「──どいて」
「どかない」

ゆるりと、首を振ってみせるその男はひどく余裕に見えてそれがどうしても悔しかった。
追いつけない。調子が狂う。この男はもっと自己中心で傲慢であるはずだ、いやそうでなければ困るという
思いに、ほらやっぱり自分勝手で強引じゃないかと、わけもわからず納得し。
本当は、一番わけがわからないのは何よりも本当は自分自身であって泣きそうになる。
やっぱり嫌いだと思った。
見たくもない、醜い感情を引きずりだされる、ポッターも自分ももう嫌でいやでしょうがない。

「どかない、聞いて、エバンズ」
「聞かないわっ」

腕で思い切り相手を突き放せば相手はあっさり後退する。
隙を見て立ち去ろうとすればすかさず手首をつかまれた。

「エバンズのこと、」
「聞かない、聞きたくない!」


つかまれた手を振り払う。
これ以上聞けばその後にはどうなってしまうのか、
それが今この瞬間ひどく怖いと思った。
どうしようもなく怖くてしょうがない。


「君が好きだよ」
(聞きたくない)
「嘘よ」
「嘘じゃない、誓って──」


これ以上何も言わせないように、聞いた言葉を追い出すように強く首を振る。
違うそうじゃない。
ダメなのだ、そもそも無理だ。


「嘘よ、だって私、無理よ」


呼吸が詰まりそうだった。
胸が苦しい。






(嗚呼お願いだから、)


























「私、今まで酷いこと言って、酷いことしてきたのよ」


自分の吐き出す言葉を嘘みたいに遠くで聞いていた。一度吐露したものは止まらなくてすでに自分が何を
しゃべろうとしているのかもわからない。
これだけは見せまいとこらえていたものは呆気なく流れ落ちた。
留まる所を知らずこぼれてくものをどうしても止められなくて、
もはや理性もなにもなくて惨めだった。


「今までさんざんに傷付けて、そんな私にどうしろというの」
「───エバンズ」


ただぼろぼろ泣く私に、途方に暮れたようなポッターが戸惑いがちに肩に触れる。


「嘘じゃないよ。誓って、クィディッチの優勝杯に賭けても、君がすごく好きなんだ」











……ポッターの手を、もう振り払うことができない。























「あんたなんか大嫌いよ」























タイトルはステイシーオリコの曲より。
大嫌いと書いてアイラビューと解くみたいな
この後二人はめでたく付き合うんです(え)