stuck


0.



「大嫌いだ」と思う気持ちに嘘はなかったし、それは進行形であって確実に未来永劫まで続いていくのだ。かつて 判押しした傲慢で、思い上がりで嫌な奴という最悪の称号も増える事こそすれ変わる事などない。有り得ない。
その男の、私の周りを鮮やかに舞うセリフ、そこに内包される意味など、決して信じないし。必要とあらば音という 音を聞くための器官を総て塞いで、追い出す。追い出してやる。



唐突なガラスの破裂音が響いて周囲をしんと静まり返らせた。
騒ぎがあればその中心が何なのか、おのずと明らかなのは今やお決まりにすらなっていると思う。
食堂の真ん中で、見遣ればやはり、あの高慢ちきで鼻持ちならない眼鏡の、ジェームズポッターが超然と佇んで いて。対峙している相手はまたセブルスだろうと思って見た、
…けれども、今回の相手はいつもと違っていた。


しんとしたのも大概つかの間で水面に波紋が広がるように、ざわめきはさざ波になる。
さざ波は大方面白がる観衆のものだ。
隣に立っていた友達ばかりか周辺の人間がちらりと私に目配せをくれて、そして言わずともその意味を知る。こう いう時割って入るのを私の役目だと、ほとんどの人が思っていたのを今更に知って、どっと言葉にできない嫌気が さした。だから行くものかと、躍起になっても思う。私はそんなじゃない、そんなじゃないと、主張したくなるの にできないジレンマに歯軋りする。

対峙している相手は学年も寮も違う男子生徒だった。乗らない心地でも目を離せずに視線で追って、男子生 徒と対峙しているのはポッターではなくて違う黒髪の親友の方だと知る。
ポッターの側にはルーピンが居た。
それは珍しいことだったから、状況を見守っていたら、嫌でも気づいてしまった。
ポッターが怪我をしていることも、
背後に誰か女の子をかばっているということにも。
今までと違って尋常じゃない状況なんだと思った。
でもそんなことなどどうでも良かった。


刹那走った感情は理解しがたくて。
目を背ける。あいつからも自分のこの感情からも──その女の子からも。
それでも纏わりつく靄のような詰まるような、乱暴なような横暴なような喚きたいような泣きたいようなこの感情が どうしようもなくて消えてくれない。

私はあいつにとっての特別なんかじゃないしそう思われるようなこともまっぴらごめんだからあいつが誰と何をして ようと関係なんかないし。
だいたい他人の事なんか考えない自己中なようなあいつがそう、私は大嫌いなのだ。

嫌いで仕方ないのだから。
そう居てくれなければ困ると、

思って。


つき動かされるようにポッターの前に進み出て仲裁なんてしてやらない、
ただ無情の目線を私は突き付けた。
何も、言わずに、せずにそのまま身を翻す。


立ち去る、ふりをしてこらえて逃げ出した。


本当はこうすることが、今のあいつにとって効果的なのだという事を無意識にも知っていたのだ。最も、一番に。



(──効果的ってなによ)



自分からわざとひどく傷つけたくせに、傷ついた顔をしたポッターを思い出したくなくて、背後から減点を朗々と告 げる先生の声を聞いて、乱暴にザマミロと思う。











思うと同時に、泣きたくてしょうがなくなった。