赤と黒の馬鹿メガネ論争
「どーしてあーなのよあの馬鹿メガネ!」
感情をむきだして騒ぎたて出したのは明るい赤い髪の少女で、うっとうしそうに頭を上げたのは対照的に黒い髪をした通称犬の少年だった。
「人の部屋来て安眠妨害なんすけど」
「知らないわよ」
「俺もお前らの事情なんか知らねーし」
「うわ最低、あんたって目の前で弱ってる子を放っとくよーな奴なんだサイアクー」
「オマエは人の目の前まで自ら来れるくらい元気一杯じゃねーかよ」
「そーやって優しい言葉のひとつもかけれないわけ、むしろかけやがれ」
「出たよー女王発言」
ベッドの上にあぐらをかいたシリウスは頭を掻くと、けだるそうに手を振る。
だいたい寝込み襲いに来るんならもちっとマシな時間に来いよ、と思考力ゼロの返答をすれば目の覚めるようなリリーの鉄拳が即座に頭の横をかすめた。
「うおっ、危な…!」
「そーゆーセリフやめてくんない?」
「いやいや本気で冗談ですからってか目が座ってますからエバンズさん…?」
「ジェームズみたいな発言されると腹立つのよね」
抑揚のない声でしれっと言い放つからむしろこわいリリーを見つつ、年中頭に花咲いてる奴と一緒かよだとか、色々思う事はあったものの、優先的にシリウスの脳裏によぎったのはあいつ何したんだよ、であって。カップルの事情に口を挟むのはこの上なく面倒だけれどそこは親友のよしみでフォローをしておかなければと、思考が働く。
「あー…。とりあえずほら、アイツの発言全て粗相なのは今に始まったもんじゃねー…し?」
これがフォローになってるかどうかはおいといて、リリーは座ったまんまの目で言う。
「んなこたわかってんのよ。いつもの事だからムカツクんじゃない」
「いやもうそれ言っちゃ全否定になっちゃうから」
「だってまともなケンカもできないのよどーなのこれ」
「お前…まだその辺あきらめてなかったのか」
呆けたような同情のような、その両方を通り越してどうでもいい心地になりつつ結局は惚れまくってんじゃん、と思う。妙に心配して損をした気分にはなったが、問題がないのならいいやと、シリウスは一通り気持ちを放棄した。
が、それも自己完結でしかなく。
「ちょっと真面目に聞いてんの?」
「だー聞いてる聞いてる」
とても真面目には聞こえない返事ぶりにリリーは更に色々言い募ろうとし、それをシリウスは手を振って制した。
文句を言いたそうな目でリリーが睨むが気にもとめず口を開く。
「だったらさ、お前は俺を信じろよ」
「─は?」
意味がわからないという顔をしたリリーに対し、予想外にもシリウスは真面目な表情をしていて。
「お前がどう思おうと俺はあのアホで頭のおかしいジェームスを信じてるから、お前はジェームズを信じてる俺を信じればいいよ」