金色に染まった木の葉が乱舞する。
吹きすさんだ風はえらく冷たいけども。
あいにくと、身を寄せ合うような仲でもないから寒さに、首を竦めて少しでも温もりを得ようとした。
「あーマフラーしてくりゃ良かった」
リリーも同じ事を思ったのか、ローブのポケットに手を突っ込んでうんうん頷く。
「普通に寒すぎるわ、今日」
歩けば敷き詰まった落ち葉がくしゃりと何ともいえない音をたてて。何ともいえない音の中にずるという妙な音が急に雑じって、隣にいたはずのリリーが視野から消える。
「…うわだっせ、落ち葉ですべって転んだやつなんて聞いた事ねー」
「うっさいわね。だったら乙女のエスコートでもしときなさいよ」
手を貸しながら、足腰弱ったばーちゃんの間違いだろと、からかう心地で言うと案の定ぐーが飛んできた。
──まあ実は、こんなやりとりも嫌いじゃない。
「うどん食べたい」
「急にかよ」
「そ。急に食べたいの」
「俺そば派だし」
あーいるわよね、そーゆーの。とか言って、何がそーゆーの何だかはいまいち謎なんだが。
「早く冬来るといーわよね」
「…そーか?」
「そんで雪積もるともっといいってか雪好きでしょ」
「なんで」
「だって犬って雪好きじゃない?」
「いや犬じゃねーし!」
リリーは笑うと機嫌よく言った。
「けっこー好きなのよねえ冬」
「ふーん。俺は夏の方がすきだわ」
「えーうわー、絶対冬の方がいいって」
「いやさみーののどこがいいんだよ」
そのままぎゃあぎゃあと言う下らない言い合いは、それぞれの良さをとことん主張するという更なる下らない議論に発展。
ことごとくかみ合わないよなって、そこは一人、軽く苦笑する。
「にしても寒いわー。落ち葉全部燃やしたろーかしら」
「…おまえ、転んだからって根に持ってんだろ」
「ちっがうわよ。そうすりゃ暖かそうでしょ」
女はみんな冷え性なのよ、と散っている葉を仰ぎながら言うリリーに。
どうでもいい時は女をかざして、いざとなると誰より対等であろうとする事は仲のいい者ならみんな知っている。
ふいに胸の奥底が疼いた。
これはそう、不完全燃焼の気持ちだ。
たぶん落ち葉のように燃やし尽き去る事も叶わなければ、雪の中にうずめて消す事もできない。
まるで消える事のない、聖火か何かのように。キレイなまんまで燻ぶり続けるから。
ある意味たちが悪かった。
「寒いのはともかく、落ち葉が散ってるとこも雪が降ってるとこも、見てるのは好きだけどな」
「あ、それ私も」
きれいよねって屈託なく笑んで。こんな時だけ意見が合うのも何だか。
ふとこんな風に会話をしてる時点で、俺はこいつの射程外なんだなって思ったがまあそれならそれで別にいいと思う。
笑えるくらい乙女思考なのは人肌恋しい季節ゆえにか?
後には、丸い爪で引っかかれたような違和感だけが残る。
俺は己のローブを脱ぐと、ばさっと音をたててリリーの頭から思い切り被せてやった。
頭をはいださせたリリーは驚いた顔をしてこっちを見てくる。
「ぶはっ、おまえ髪ぼさぼさ」
「あんたがやったんでしょ…てかいいわよ」
「女は冷え性なんだろ」
「──でもシリウスだって寒」
「いーから着とけって」
言葉を遮って、つまりはせめて、こんな時くらい対等でなくてもいいだろって思った俺の思いを、無理矢理ローブに押し付けた。
これは自分の、そして男のエゴだ。
「冬は嫌いだけど、寒いのは得意なんだよ」
うどんとかそばとか英国人にありえないとおもってもそっとスルーしてやって下さい(…)