人の中に居すぎれば離れたくなり、こういう時自分の、長くはなく歩いてきた生き様の悪さがわかるが、あまり悪いとは思わない悪いクセ。
時に息苦しくなってまで、愛想を振りまけるほどにできた君子じゃ僕はないのだ。
もともとが「ひとり」に慣れている、と言ってしまうのは傲慢だろうか。でも一方でそれは事実だった。
少し下を見ただけで、嫌でも目に入るのは胸に着くちらりと光るモノ。
監督生バッチを身に着けるのは、実は好きじゃない。そのくせきっちり着けてしまう自分はその程度の人間だと思う。
言い渡された仕事もその報告も一通り終えたから構わないような気がして、わざと人気のない所を流浪した。
していたつもりで、だが。
「あっ、見つけたわリーマス!」
…唐突に沈黙を破られるのは、いつものことである。
「やあ、リリー」
「やあ、リリー。じゃないでしょお!仕事終わったら終わったで、集まろうって話だったじゃないの」
「そーだったっけ?」
わざととぼけてみせれば、リリーはわかりやすいくらい眉根を寄せる。
「まったくもー行くわよ」
「行くっていうと」
「集まりの方なら解散したわ」
そういって、ぐいぐいと談話室まで引っ張り込まれ。
はっきり言って騒がしいとは思うのだが、決して嫌いじゃない。むしろ好ましいと思う。
自分のこの吐きそうな世界をあっさりと壊してしまう他の3人の友人も、そして彼女も例外ではなく。
「そーやって人と距離を置きたがるのは良くないクセね」
どうして…と問うのは鋭い彼女の前において愚問だろう。
腰に手をあてて怒る姿は、ホームムービーか何かだなとどこかおかしく思いつつ。
「案外、そういうのって人にわかっちゃうものよ」
そこまで言うと、リリーはこだわりなく笑ってみせた。
こういう哲学的にだかモラル的にか、当たり前のように言われ思ってる事を言ってくれるのがどれほどありがたいか、彼女は自覚していないだろう。どうしても忘れがちになる、こういう時に、だから身に沁みて思う。
「そうだ、紅茶でもいれる?」
いいこと思いついたと、嬉しそうに聞いてくるリリーを僕は押しとどめた。
人から離れて、気が済むまで、そうしてたまに、単に確かめたくなる。
「ひとり」には慣れていたが、それでいて不慣れだった。
実はちょうど人恋しくなりだしていた時で、その時きみが現れたんだ、とは口にしないけれども。
もはや自分だけで生きてるんだとかやってけるんだとか、そんないきすぎた子供心を露呈するわけじゃない。
一人じゃあ、何もできないことはよく、知っている。
すでに嫌ほどにも、思い知った。
ふいに、人目のないのをいい事に、隣に座るリリーの肩に腕を伸ばして頭をもたせかけた。
リリーが驚いたのが、手に、うつむいた額に振動で伝わってくる。
彼女が動揺するなんて滅多にあるものではないので、思わず、顔が見えないのをいいことに、僕はこらえきれずくつくつと笑った。