愛と勇気だけが(略)のマーチングソング





ざるみたいに飲めなきゃ勤まらない商売だが、ふらりと営業妨害のようにやってくる この男も紛れもないざるだと思う。
思う、とか思って、いや間違ったかもしれないぜ、とちゃんと心中で訂正を入れる。
確かに正宗はプラチナの酔っ払った姿を見たことがない。
見たことがない、というのはちょっとばかり語弊があって、
正しく言い換えるならば日常からプラチナの言動は、すでに酔っ払いにしか見えない。



この日も唐突にふんふんとご機嫌でハミングし出したプラチナの顔面に、正宗は容赦なく 固く絞ったおしぼりをぶん投げた。

「いててっ、この固さ、いっそ凶器だからこのスピードありえないから!
 もっとソフトにパスしてくれたまへ☆」
「店のムードが壊れる。他所でやれ。つーか帰れ」
「何か三段論法みたいなやり方でぼく拒絶されちゃった」
「ちゃった、じゃねえ。急に意味不明な歌うたい出すなおめーは」
「意味不明って、えっ嘘! 正宗クン。もしかしてもしかすると、
 小さい子も大好きなこの歌を知らないの?」
「はあ?」
「はあ、って嘘っ」
「だから何なんだよ」

居心地が悪そうに睨めつける何かの動物みたいな反応の正宗を見て、
じゃあヒントはね、

「愛と、勇気だけ〜が〜友達さ〜」
「何だテメーは、今度の相手は、アイちゃんとユウキちゃんなのか。
 湟神に言ってやろーか」
「それで妬いてくれたらボク的にはラッキー、て違うから!!
これ正義の味方の歌だから! ここ、色んな意味で有名なフレーズだから!」
「はあー? 正義の味方の歌?」
「アンパンマンさ☆」
「あんぱん? が正義の味方なのかよ。おまえのヒーロー像も終わったな」
「いやいや!! っていうかっ、あっそっかー、正宗ちゃん海外育ちだからね。こんな所でカルチャーショック。
 アンパンマンはね、お腹がすいた弱者に身を削って手を差し伸べたり、
 濡れても頭が何度も変わったりバイ菌と戦ったりするスーパーヒーローなわけだよ」
「もう後半の説明の意味がわからねえ。バイ菌? しかも頭が変わるって何だ。死んでんだろ」
「いやそこは仲間の大切さの象徴みたいなもんじゃないかな。あとはあきらめない精神とか」
「よくわかんねーが。
 まあ、確かにお前はあきらめが悪い奴だと思うぜ」



というかむしろ、諦めていて延々片想いのこの状況なのか。
いや、諦めるのと受け入れるのは違うのさと。
そして自分は受け入れている方なのだ、とは当人の弁だが。




とある夕方に何とはなしにチャンネルを回した正宗は、偶然に例のアンパンヒーローの番組に行き着いて。
別に見る気もなかったが、30分だらだらと見続けてそれでプラチナの言っていた主旨を理解した。
だがまあどちらかというと正宗が驚いたのは、
よく見ればヒーローの孤独が歌い上げられているオープニングの歌詞の内容で。
プラチナが前に歌ってみせたフレーズを反芻する。

「…なるほど、愛と勇気だけ、か」

確かにあいつなら、愛と勇気は充分備えているだろう。
あれだけ酷い扱いを受けてもまだ、想っていられるというのは。
つまりそういうことだと思う。まあ紙一重で危険な気もしているが。
おめーもなかなか強い奴だと、
滅多に思わないことを暫し、正宗は思いやった。













この二人の組み合わせ好きすぎる