おもしろいコだなと思ったのが最初だった。
いや「コ」呼ばわりしてるけども彼女の方が、立派に少し年上で。
学年もましてや能力別クラスも違ったけれど、色々有名人だったからもともと噂と名前位聞き知ってはいた。
彼女、安積柚香は例えば盗む能力者であるとか。
落ちこぼれ特力のキラワレ者なのだとか。
近づくだけでアリスがなくなるとか不幸がうつるとか。果てはとんでもないブスだだとか。
まあまっとうな(と言えるのかどのみち噂だし謎だけども)、のもあれば幼稚じみたバカけた内容のものまで絶えず色んな女のコが教えてくれる、そのどれも別に興味もなかったし。
そもそも面白い事なんて何もありはしなかったし。
まして面倒ごとをいちいち買うたちでもなかったから、まあ関わる事も永遠ないだろうと漠然とそう、思っていた。
──はずだった。
流れるような髪を目で追う。快活に動く手足を見れば遠目でもああ彼女だなと思った。
何となく、強い子なんだろうと認識していたから、自分が構うことで返ってくる驚いたような戸惑ったようなどこか照れてる気もする反応が意外で、また構いたくなって。
そんなことを続けて。
いつの間にか無意識下に、彼女の姿を求めるようになった。
あの髪に触れたいと願うのと彼女の笑顔を見たいと思ったのはほぼ同時期だったろうか。
気付いて何だソレと自嘲する。
ただつまらない毎日の中で、少し面白い気がしたから彼女を探すだけだ。
そう思って、確かにその通りなのに、それだけでは言いきれない何かが胸の奥で燻ぶる。強く強く。
内側からこみ上げて叩くこの、感情がなんであるのか。
思わずあてはめる言葉を捜して、それに見合うものはないと思って、何故か安心して僅かに淋しくなる。
それでも、遠くなく気付いた。
気付いてしまった。
たぶんこの感情をあてはめられる言葉は一つしかない。
口にしてみて、その響きのあまりの陳腐さに笑いそうになる、まさか恋だとか愛だとかなんて。
自分が真面目にそんなものまるでガラじゃないと、でもどうしても笑いきれなくて。
やっぱりそれしかないのだと思った。
面倒くさいことになったなとも。
厄介ごとは、ごめんだったはずなのに。
──思いとは裏腹に、感情の熱は、自覚して急浮上する。
もう症状は、思う以上に手遅れすぎて。
とっくに、戻れそうにもなかった。