色々と物を知りたがる子だというのが、私が小さい頃よく言われたセリフである。
実際、私のそれはちょっとばかり近所でも有名だったらしく、
「大人の舌を巻くような質問をする」がキャッチフレーズのような幼少時代だった。
そんな他愛のない昔の記憶をたどった話をすれば、
あんたは返答しにくい事ばかり聞いて周りに嫌がられたんじゃないのかと
からかわれるように笑われたけれども、確かに大人を困らすようなこともだいぶ聞いてきたかもしれない。
ただそのおかげでか今は人より物知りだ。人から情報通、と呼ばれる程度には。
そしてあいにくと「知りたがりな子」は今でも健在だったりする。
でもどうしてと問われれば、きっと自分はもうそういう性質をはなから備えていたんだろう。
そうとしか言いようがない。
知ることは、はっきり言って苦しみだと思う。
知識の、一つひとつを身に刻むことの苦しさ、
ただそれよりも抗えない好奇心が強くて、その先にある充足に惹かれた。単純なことだ。
色々なことを知りすぎている女など、可愛げがないと一般に思われることも
わかっていたけれどそんな、つまらないことにこだわるタマでもないので。
…そう、ただ一人の人、その相手を除いてしまえば──
「そんなんじゃ男にもモテないだろ」
「さっきから随分なこと言ってくれますね鳴海さん」
「パンチならくわないぞ」
「それくらいくらって下さい。だいたい、これでも私隠れたファンたくさん居るんですよー」
「情報操作は感心しないな」
「そんなこと言ってる間に、私が誰かに攫われちゃっても知りませんよ」
「あんたが素直に攫われるタマか」
「なーるーみーさ〜ん」
拳でぐーと作った瞬間に。ふっと笑んでそれにと、不意に言葉を付け加えられる。
「俺はあんたが居ないとダメなんだろう?」
「…っ」
──どこでそんな口説き文句覚えたんですか。と言いたくなるのは寸でで留め。
確かに、鳴海さんは私がいないとダメな人だと、言ったのは他でもない自分だけれども。
──だが果たして。
相手がいないとダメなのは、向こうかなのかそれとも、
自分か。
本当は知っていた、のだ。
情報を持つことのリスクとフラストレーション。
誰より鳴海歩が、利害や自身のステイタスという枠を超えて、
自分の情報を必要としていたから…という事情は結局結果に過ぎず。何より言い訳に過ぎない。
情報の重さと、その多さゆえに時にぶつける先が欲しくなる心の鬱積。
それらを埋めてくれるのは、そしてどんな形でも受け止めてくれるのは。
結局他の誰でもなく。最後まで、そしてきっとこれからも。
彼でしかありえなかったと。