春は短し恋せよ乙女☆







「知っていましたか?天才は二人居なければ天才には成り得ないんですよ」
「何を急に仰るのかと思えば珍しい、私と秋山くんの関係を褒めて下さるなんて明日の天気は槍ですかヨコヤさん」
「いつ誰が彼と貴女の関係だと言いましたか、全く自意識過剰で困る」
「ではご自分のことだとでも言いたいんですか、この妄想族男」
「あっあの、お二人とも、」
「やめときな直。こういう奴らはね、勝手に二人で潰し合わせときゃいいんだよ」
「おや、聞き捨てなりませんね。億が一にも私とこの女史が共倒れしたとして、その隙に彼を奪おうという魂胆ですか女狐さん。いやメスだったかオスだったか」
「─てめ、そこわかってて言ってるんだろうがァァア!!」
「ちょ、福永さんまで参加してどうするんですか!」
「そうだぞ!直ちゃんが困ってんだろお前らやめろよ!」
「何ですか。この目ざわりな豹柄は」
「目がチカチカするんだよ豹柄」
「えっいや待って、何この豹の柄が全部悪いみたいな感じヘコむんですけど!」
「やれやれ…話の腰を折られましたね。とにかく、」
「しかも無視?!泣ける!」
「─そう、天才は二人居てはじめて天才になれる、世の中に悪をばら撒くバイキンマンと、それを退治するアンパンマンの関係然り」
「例えに全くセンスを感じませんが、この場合バイキンマンはマルチを経営していたヨコヤさんで、アンパンマンはそれを潰した秋山君とみていいでしょう」
「白と黒だけ身に着ければいい安易なツートーンの方に、センスを語られたくありませんね」
「それを白しかないワントーンの人が言えますか、髪まで真っ白のくせに」
「お互い突っ込むとこそっちかよ。どうでもいいけど、自分のことバイキンに貶めるなんて発想、いっそ色んなもの通り越して清々しい位だね」
「そんな…、ヨコヤさんは、バイキンなんかじゃないです…!」
「おや、心優しい神崎さん。貴女はなかなかに見どころがあるので、どれバタ子さんにでも任命して差し上げましょう。投球のコントロールに、自信はおありで?」
「えっ?ええと、ボール…というか運動は、あまり…」
「こんなバイキンまともに相手にしなくていいんですよ、菌がうつりますよ神崎さん」
「チッ、せっかく懐柔しようと思ったものを忌々しい白黒ですね。 私はただの菌ではない、悪を牛耳る偉大な菌なのです」
「ちょ、直、まじでコイツに近づくんじゃないよ、この白髪男は存在自体が発禁もの!」
「ふふふ、ようやく恐れをなしましたか。そう、この私のことは彼以外の誰にも止められやしないのです。
反発しあいながらお互いの存在を認め求めあってしまう、悟空とべジータ然り、アムロとシャア然り、矢吹丈と力石徹然り──」
「何が天才ですか。こんなただのアニメオタク、放っといて皆さん行きましょう」
「尻尾を巻いて逃げるのですね、万年2位さん」
「──言っておきますが、私は過去1度秋山君に勝っています。そちらこそ敗北しかしたことのない身分で何が言えますか」
「…また始まった…。直ちゃん、今のうちにもうこの場を抜けちゃおうぜ」
「え、でも、」
「豹柄の割りには賢明な判断だね、放っときな」
「ほら福永も賛成だって!行こう!だいたいあの冷徹ネチネチの秋山のどこがいいんだっつーの!」


その瞬間、空気が冷えて無用な言いあいが止んだことに瞬間的に気付いた江藤は、えっ、と凍りつきながらも状況が読めずに目線を泳がせた。
自分に集中する痛いくらいの視線、にとりあえず本能だけが、何かやべえ俺やべえ、と警報を鳴らす。


「江藤さん誤解です!秋山さんは冷たそうに見えるかもしれないけれど、本当は心優しくて思いやりに溢れた、とっても温かい人なんです!!」
「見損なったよ江藤、今まであいつがどんな思いであのゲームを戦ってきたのか、あんたなら解ってるって思ってたのに」
「そもそも豹柄の分際で彼を悪く言うなど100万年早い、彼をボロボロに貶し愛していいのは私だけなのですよ」
「その発言、かなり聞き咎めるものがありますが、まずはそこの豹柄の君、今の発言をしたことを悔い改めて頂きましょうか」
「も、もう心底悔い改めてます本当すみませんでしたァァ!!!生まれてきてしまって心からすみませんでしたァァ!!!何で急に一致団結、もう心が折れる…!!」


江藤を取り囲む4人と、その中心で半泣きで土下座をしている江藤。という状況を見かねたコウタは、それまで賢明にも一定の距離を置いて絶対関わらないようにしていたが、すぐさまこの状況を収集できるであろう、只一人の男を呼びに走った。
戻るまで死ぬなよ、と心の中で祈りつつも、思わず嘆息が漏れて無意識に一人ごちる。


「馬鹿だな江藤は。恋する乙女ってやつほどめんどくさくて、敵に回しちゃいけないものは無いんだよ」


いや半数ほど乙女じゃないですよね、と突っ込む者は最早ここには居なかったけれど。








出したいキャラを出したいようにやりたい放題