2.確信犯の失態
泣いている女を見て鳴海はうんざりした。
この状況を招く種を撒いたのは間違いなく自分自身のくせに、
泣き出した目の前の女にどっと疲れを覚えて息をつきたくなって鳴海は軽く空を仰いだ。
もしもこれが先輩だったら絶対泣いたりしないだろうなって、
それよかこんな可愛い事はできないんだろうなって場違いにもトリップして、
思わず笑いそうになってふと我に返る。
そんなに彼女は器用じゃないけども。正反対に、震えながら涙するその子の姿は可憐で、
現実に男心をぐっとつかむほど可愛い。
ぽろぽろと目からこぼされるものはきれいに光り、全霊で無垢さと罪のなさを訴えていた。
(そういつだって悪いのは俺さ)
そのカワイイ子をぼんやり見つめながら、あー普通はこういう子と付き合いたいって思うはずなんだよなあ。
それでもしかし、鳴海が考えたことといえば、あくまで冷静に、むしろ冷ややかなほどに、どうやってこの状況を終わらせるかということだった。
白状すれば、先に口説いたのは鳴海の方なのである。だからこの状況は自業自得で。
鳴海はただ、想っていた彼女が、自分以外の男を見ているんだと明確にわかってしまったのが
予想以上に、そう予想以上に辛かったのだ。覚悟は、していたはずなのに。
だから結構、その時はもう誰でも良い気がしてしまって。
幸い能力など使わなくたって、ルックスには恵まれてるし潜在的にたらしこむのも得意だし。ちょうど手身近にいたのが、よくは知らないその女の子で、しかも彼氏持ちだったらしいが構わず手を出した。でも長続きもせずに今に至る。当然といえば当然だろう。好いていたわけじゃなかったんだから。それに女はそういうことに敏感だ。
最終的に、キレのあるビンタを鳴海の頬にかまして目の前から女は去って行った。可愛く泣きながらもなかなかしたたかなもんだと、予想以上にじんじんする頬をなでる。
だけど向こうだって、倦怠期だったのかどうなのか口説いてほしそうなそぶりを見せてたし、だから俺だけの責任じゃないよねと言い訳のように思った。それにあの子はこのあと元の鞘に戻ってめでたしめでたしだろう。というかそのような事をほのめかしてたし。
結局、自分の方に気持ちを向けさせることができたとしたって、それが彼女じゃなければ意味がなくて。こぼされる涙が彼女のものだったらいくらでも拭うのになんて気付くのは、今更すぎることだった。
「あーあ」